古民家リフォーム 土壁の話
古民家に限った話ではないのですが、比較的古い30年以上前の木造建築の場合には
壁に土壁が用いられているのが良く見られます。
ところが、現代の新築住宅では土壁で仕上げられることが少なくなってきており、
また土壁を扱える左官職人さんも減ってきているようです。
おそらく、現代の建築でこの土壁が避けられるようになってきた理由には
その工事期間の問題があるのではないかと思います。
現在よく用いられている壁の造り方というのは、
柱と柱の間に桟を取り付けた上に石膏ボードを張って、
さらにその上からビニールクロスで仕上げるという形が主流になっています。
その工程は大工さんと仕上のクロス屋さんだけで完結しますから、
土を乾かす時間というものが不要なのです。(これを乾式工法と呼びます)
一方、土壁で仕上げようと思うと、柱と柱の間に貫(ぬき)という木を渡し、
そこに小舞竹という竹を編んでいきます。
それから藁などを混ぜた土を塗り込んでいく訳です。(乾式工法に対して湿式工法と呼ばれます)
乾かしてから次、乾かしてから次、と4回程度も塗り上げていきます。
こうして出来上がった土壁はさらにその上に漆喰(しっくい)や聚楽(じゅらく)といった仕上材が塗られ
完成するのですが、実は単に「昔のやり方」で済ませてしまうにはもったいない部分もあるのです。
そのひとつが、実は土壁にも耐震性能があるという話です。
古い木造建築は今のような耐震基準というものがありませんでした。
したがって、壁の量の少なさや屋根の重量など、耐震性には不利になる部分が多々ある訳です。
ところが、日本という国は昔から大地震の災害を何度も受けてきた国です。
当然地震に対する備えは代々受け継がれ、古民家のような大型の建物にはその匠の技術が取り入れられているのです。
そのひとつが土壁でもあり、壁の中の貫や藁が互いに絡み合って、
その土壁の厚みによっては大きな耐力壁となるのです。
(現代の国の耐震診断基準においても、壁の厚みによってその耐力が認められています。)
また、土の間にある細かい気泡は空気を閉じ込め、
優れた耐火性と断熱性をもっています。
(土蔵のような厚みまでもたせてしまうと、火災でも蔵だけ残ったりします。
また、夏でもひんやりと涼しい古民家の過ごしやすさは土壁の恩恵を受けているのです。)
土壁はほぼ完全に自然素材であり、解体すればまた土に戻っていく大変環境に優しい素材です。
とはいえ、元々あったものを解体してしまうと、大量の壁土が産業廃棄物になってしまいます。
(環境に優しいものであっても、無断で山に廃棄する訳にはいきませんので。)
歴史ある建物に使われている、実は魅力的な素材でもある土壁。
もちろん新しい建材の利便性も大いに活かすべきだとは思いますが、
古き善き建材のメリットも上手に利用しながら、生まれ変わらせてみてはいかがでしょうか。
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