古⺠家と一般の木造とはまるで違う建物

古⺠家は「伝統的工法」と呼ばれる大きな柱と梁で構成される特殊な木造建築です。今の住宅と違って釘や金物をあまり用いず、木と木を伝統的な仕口や継手で接合させています。壁には筋交いではなく貫と呼ばれる水平部材が用いられ、基礎も通常はありません。石の上に直接柱が乗せられた工法で、大きな大黑柱や中黑・小黑といった柱を中心にして、非常に荷重のある屋根を支えるような構造になっています。

今の建築と違い、床の高さが非常に高くとられているケースが多い反面、差鴨居と呼ばれる梁を兼ねた鴨居の位置は170cm前後と低く、この段差にどう対応していくかといったところは、プラン能力だけでなく、施工上も非常に技術力を必要とします。

間取りについては、客間の和室を重視した造りになっており、家人の居住スペースが家の規模の割に、北側の狭いところに追いやられていることが多いのも特徴です。伝統的な建物の良さを活かしながら、住む人の利便性を高める提案にもスキルが必要となります。

耐震補強に対する考えも非常に重要です。古⺠家は柱と梁で支える構造となっていますので、今の建築基準法上の「壁で支える」という考え方で判断すると、圧倒的な壁の少なさと家の重量の重さから、極端に低い耐震診断結果となることが少なくありません。
基礎がないのが基本ですから、基礎を新設して壁の補強をしていくのか、あるいは揺れを吸収させる制震補強を行うのかなど、高度な補強設計・提案が必要になるところも、大きな特徴のひとつとなっています。