築年数の古い、古民家という家にお邪魔すると
玄関から上にあがるのに、大きな段差があることに気づかされます。
バリアフリーが声高に叫ばれる昨今の住宅においては
段差があること自体が罪であるかのように言われているため、
だから古い家は・・・とその代名詞のように言われてしまうことも多いのです。
玄関の土間からの高さというのは、すなわち一般的には1階の床組みの高さを表します。
基礎の無かった当時の建物において、高い位置に床組みが設定されている理由、それは
「風通し」による温度・湿度の調節機能が重視されていたということなのです。
昔は当然、今のように便利な空調機器があった訳ではありません。
夏にはせいぜい庭先に井戸水を打ち水にして涼んでいた程度でしょう。
そんな当時の住まいにあっては、日の当たることのない床下の冷気と
そこを流れる自然の風が空調の機能を担っていたに違いありません。
冬の寒さよりも、夏の涼しさを重視された日本の住まいにとっては、
床の高さを高く設け、日陰と風を上手に利用することが何よりも快適な方法だったのでしょう。
時が変わって現代の暮らしにおいては
温暖化によって夏の暑さは想像を絶するまでになってきました。
まわりの家々も冷房によって外に温風を吐き出し、
昔のように自然の心地よい風にも期待できなくなってきてしまいました。
もはや床高が高いからといって、それだけで涼しく暮らせる時代ではなくなってしまいましたが、
段差を極力緩やかに上がれるように工夫してみたり、
支障のない範囲で段差をあえて残してみたり、
上手に工夫しながら昔の人の暮らし方に少し思いを馳せてみるのもよいかもしれません。
Copyright © Reform Compass All rights reserved.